2012年5月24日

賄賂


先日あるクラスで、テスト前に生徒からお金を渡された。賄賂だ。
「学校のテストで忙しくて勉強できなかったんだ」と。

もちろん受け取らなかった。ここは学校や大学と違って落第なんてないし、どの生徒も自分に合ったレベルのクラスで勉強する。
そもそもこの学校は義務でも何でもない。そこまで必死になる必要はない。

教師への贈賄はここでは普通らしい。苦手な教科のテストのときには、生徒は教師に5001500som8002400円ほど)を渡して合格させてもらう(物価は日本の3分の1程度)。

「期末テストは順調?進級できそう?」と生徒に聞いたら、「苦手な科学のテストでは先生にお金渡しといたから完璧」とか答えられた。
進級するために必死になる気持ちはもちろん分かるけど、多くの生徒はバイトをしていないため、そのお金は親のお金ってことになる。嫌な教科のためにそのお小遣いを使ってしまうなんてもったいないじゃないか。

私に賄賂を渡そうとしてきた生徒は、よく授業で「世界はカネに支配されている。もっと大切なものがある!」とかかっこいいことを言ってくれるのだけど、言っていることとやっていること矛盾してないかい?と思ってしまった。

授業だけでは足らないから個人的に会話の練習をさせて欲しいと言ってくる生徒もいる。
これはむしろ嬉しいので、カフェとかで会ってただ話したり、分からないところを教えてあげたりする。

よく授業で聞かれるのが、北方領土問題。
旧ソビエトの国だけあって、ロシアと日本の関係は気になるらしい。


憲法改正を求める車。よく日本でも見るね。警察から注意を受けている。
ホワイトハウス前では今でも市民による抗議活動が続いている。

ムスリムが7割以上を占めているだけあって、子供の数が本当に多い。
一世帯当りの子供の数は3人〜多くて10人など。街を歩いていると若い人ばかりだ。

だが一方で、キルギスやウズベキスタンでは高齢者の数も増えており、病院のベッドの不足で治療を受けられない患者や、退職後に十分な年金を受け取れない人が増えているのだとか。

普段は弁護士として働いている生徒(30歳)がいるのだが、彼女が一ヶ月に稼げる額は2万円程度。なんと私よりも少ない。
物価は確かに安いけど、家賃や光熱費を含め、更に年金を納めるとなるとかなり厳しいだろう。

彼らがしきりに政府に対して抗議するのは納得できる。10年、20年でこの国がどう変化していくか少し楽しみだ。

2012年5月19日

母国語


 
毎朝、カーテンを開けて目の前に見える山々を見て、今日も美しいなあ、と感じつつ朝ご飯食べています。

不思議なことに、どんなに曇った日でも山頂までくっきり見える。
40007000m級の山々が連なる。
毎日同じ山を見ているのに、ずっと見ていても飽きない。
雪をかぶった高い山がはるか向こうまで続く。

夜は満点の星空。標高が1500mくらいあるから空が近い。
その下で飲むコニャック(ウイスキー+ブドウって感じ?)は・・もう言うことないね♪

この前、The Times of Central Asiaの創業者でもあるFiacconi社長と会ってきた。
メールを送ったときは、まさか社長に会えるとは思ってなかったのだけど、朝の30分だけなら時間とれるから私が会うよ、との返事をもらえ、緊張しながらもオフィスへ向かった。

彼はイタリア出身。約30前にキルギスへ移住。
ヨーロッパと東アジア(中国、日本など)に挟まれた中央アジアは、世界から見たら少し隠れた存在にあり、まだ未発達な部分が多い。
中央アジアに来る外国人は、ロシア語をわからないとニュースも新聞も理解できない。世界との距離を縮め、中央アジアをより発展させたいと考え、1999年に設立したとのだとか。

社長はもう大分いい歳なのだけど、指二本使ってパソコンのキーボードを打っていた。

考えてみたら、ここに滞在するのもあと残すとこ1ヶ月半。あっという間だ。やり残すことないように、もっと動かねば。

先日、日本とアメリカ2カ国の国籍を持つパッカーと会った。
日本とアメリカを客観的に見てきた人なので話していてなかなか面白かった。だが彼は「母国語」が英語なのか日本語なのか分からないらしい。

ビシュケクではロシア系もキルギス系も大体の人がロシア語を話す。
キルギス語を話すのは年配のキルギス人くらい。
大学に入ってから初めてキルギス語を習う生徒たちも多い。

ここはキルギスという国なのにキルギス語を話せないなんて何だか不思議だ・・・と思ったけど、考えてみたら世界中そんな国ばかりだなあと。

きっとキルギスの若者にとってはロシア語を話せた方が将来的にも可能性が広がるんだろうなあと思う。
銀行や通信会社、テレビ局なんかは大体がロシアの会社。
貿易や投資先もやはり旧ソ連の国向けが多いからロシア語が必須になる。 海外でロシア語の先生として働くことも出来る。

514日から614日までの1ヶ月間、ビシュケク市全土お湯が使えない(!)
最初これを知らなくて、シャワーを15分くらい出し続け、まだお湯が出ない・・と焦っていた。

最近は毎日心の準備をしてから、水シャワーを浴びています。
お湯を沸かしてバケツに入れてみるものの、きりがないのでほぼ冷水を使うことになる。

来月までの辛抱だ・・。
1ヶ月もお湯が使えない首都なんてなかなかないぞ。


スイス、ドイツ、オランダ、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア
こんなに小さくてあまり知られていないような国でも、色んな国から働きに来ている人がたくさんいる。
だいたいの人は、英語教師かNGOの職員。

街を歩いていると、「○○はどこですか?」「どのバスに乗ればいいか」など聞かれたり、「アンニョンハセヨ!」と挨拶されたことも。

まだ日本人に会ったことはないけれど(私が気付いてないだけかも知れないが)、日本人の経営するゲストハウスがあるそうなので一度のぞいてみようかと思います♪




こんなパブを見つけました^^

授業で扱うテキストはイギリス英語。中央アジアの国では、ほとんどがイギリス英語で習うそう。
イギリス英語の方が好きなのでこれは嬉しい。
アメリカ出身の先生はぶつぶつ文句を言っているが・・

2012年5月9日

対独戦勝記念日 〜キルギスの何が嫌い?

 
今日は、対独戦勝記念日。
一部ヨーロッパや旧ソ連の国はどこも祝日で、戦争の勝利を祝う。ヨーロッパでは58日だが、モスクワ時間で9日だったため旧ソ連の国は今日が祝日。

敗戦国である日本で生まれ育った私にとっては、戦争の勝利を祝うということに若干の違和感を感じる。もちろんみんな戦争が好きという訳ではないのだろうが、やはり勝利は勝利。
嬉しいものなのか。複雑だ。



お祭り騒ぎ。
なぜか彼らを見ていて鳥肌立った。例えば日本で、W杯の試合に勝った日の夜東京の街中でお祝いするのとは訳が違う。人が死んでるんだぞ?それでも勝利は勝利なのか。もし日本が戦争に勝っていたら同じように祝ったのだろうか。

今日ばかりは兵士も人気者。ホワイトハウスやマナス像の前で一緒に写真を撮ったり。
いやいや、普段兵士たちに文句ばっか言ってるのに。おかしくないですか?


*********
この間、早速プログラム制作のお手伝いへ行ってきた。
刑務所へ入り撮影やインタビュー。人生初の刑務所。

その会社のジャーナリストの方に、「キルギスの嫌いなところは何?」と聞かれた。面白い質問だ。

キルギスのどこが気に入った?という質問は、会う人ほとんどに聞かれる。もちろん他の国でも。でも、嫌いなところを聞いてくる人はその人が初めて。

この質問には結構考えさせられた。「まじかよ」と思うことは山ほどあるけど、それは別に嫌いな訳ではないし、ここが海外だから許容できる。
むしろ文化の違いとして楽しめる。もし同じことを日本で経験したら、イライラして文句を言いたくなるのだろうが。

例えばマルシュルットカ(ミニバス)。
車内は人ですし詰め、そして降りたいところでアスタナヴィーチェ!(ストップ!)と言って降りる。
でも、人が邪魔して窓の外が見られない上、眩しいからと皆カーテンを閉める。
しかも窓は自分の腰あたりの位置にあるため、余計見にくい。当然、日本の電車やバスのように「次は〇〇です」なんて言ってくれない。
ちょっとでもぼーとしてれば乗り過ごしてしまう。時刻表もない。
やたらと飛ばす運転手もいれば、嫌がらせじゃないかと思うくらいゆっくり運転する人も。

もう今は慣れて降りる場所も感覚で分かるようになったが、初めは苦痛でたまらなかった。
でもそれが嫌いかと言われたら、違うんだよなあ。
だってこれがキルギスだし。

あと時間にとにかくルーズ。
というより日本人がやたら時間厳守なのか。待ち合わせ時間に30分〜1時間遅れてくるのは当たり前。
「あと5分」と言われたら最低でも15分は見た方がいい。
それから「〇〇までバスで何分か」と聞いて、「大目に見て20分」と言われても決して20分以内には着けない。基本もうプラス20分は見た方がいい。

でも、世界中の国できちんと時間を守るような国ってほんの一握りだと思う。

キルギスの人にとってこの国の嫌いなものは、とにかく政府。
確かに聞く話ではここの政府はひどいが、正直私にとっては関係ないことだし、むしろ政府がまともに機能して経済が発展していたら物価が高くなっていただろうから、かえってラッキーだ。そんなことは口が裂けても言えないが。

日本に来た外国人に、「日本のどこが嫌いか」聞いてみると面白いと思います。日本に居るときによく聞いた文句は、「Wi-Fiを使える場所が少ない」「緑が少ない」「店員がやたら謝ってくる」。嫌いな部分を聞いてみると、今まで知らなかった日本を知ることができるかも。

2012年5月3日

一ヶ月経って、思うこと

 
最近はホストファミリーが不在なことが多く、一人暮らし状態。
一応私は外国人なのだし、ホストは何も怖さとか感じないのかと不思議に思う。
私は別に構わないのだけど・・
 
先日スイス出身のパッカーの人と話す機会があったのだけど、彼は「キルギスの山はスイスの山より美しいと思う。ただ、サービスの面で劣る」と言っていた。

美しい自然があればそれだけで良くて、どの高級レストランやホテルよりも比べられないほどの価値があると私は思う。
だから私はキルギスの山が好きだ。下手なお土産屋さんも山小屋風なカフェなんかもない。
どーんと山が構えているだけ。これがいい。

先々週山で馬に乗せてくれたおじさんも、それで商売をしている訳ではなく、ただ我々が頼んだから馬を貸してくれただけだったからなあ。旅人からすればそれで十分なんだよね。

ホテルや旅館が建ち並んで、お土産屋さんに群がる人で賑わっていたら、本当の自然を楽しめない気がする。
もちろん人によって楽しみ方は違うけど、自然そのものが持つありのままの風景やにおい、動物の鳴き声や糞でさえ、心を満たしてくれるし、少なくとも東京のオフィス街よりはずっといい。



ビシュケク市内では18階以上ある建物を建てると法律違反になる。
山の景観を失ってしまうから。高層ビルを建てるのはそれほど難しいことではないけど、7000m級の山を人間の手でつくるのは不可能だもんね。

私のホストファミリーが住むフラットではよく停電が起きる。
全部屋停電。ろうそく一本で夕飯を食べることもしばしば。水もたまに出なくなる。
決して水不足という訳ではなく、下水が整っていないためである。

でも文句を言う人など誰もいないし、みんなそれぞれに知恵を働かせて乗り切っている。
それで十分だと思うんだなあ。
 
生徒たちにキルギスについて教えてくれと言うと、多くの生徒が「キルギスには、お金はないけど美しい山々と湖がある」と誇らしげに話してくれる。
日本の生徒たちはどのように自分の国を紹介するのだろうか。

昨日はHTCという会社を訪問。
テレビやラジオの番組を制作・放送している会社で、昨年の東日本大震災後に日本に来て取材もしたらしい。全施設見せてもらい、来週から経済・政治・評論の番組制作のお手伝いをたまにすることに。
日本の情報を取り入れたいそう。間違ったこと教えないように気をつけなければ・・

もうビシュケクに着いてから今日で1ヶ月。日本はGWだね。

こっちにも休暇はあります(私のインターン先は関係ないのだけど)。
第二次大戦で旧ソ連がナチスドイツに勝ったのが59日。キルギスの陸路国境は今閉まっているらしい。

もう今の時点で、私がこれまでに一番長く滞在した海外の国がキルギスとなる。
正直、おかしな人生だなと思う。

元々イギリスで半年インターンしようと思っていて、現地のインターン会社と連絡を取り合っていたのだが、条件として「YMSビザが必要」とのことだった。
日本からは1000人しか取れないこのワーホリビザ。
残念ながら抽選に落ち、次に見つけた仕事がリトアニアでのインターン。こちらは日程が合わず断念。

ちなみにリトアニアだったら、シベ鉄でロシアを横断する予定だった。

もしイギリスに決まっていたら、リトアニアに決まっていたら、ここまでアジアに目を向けることもなかっただろう。
キルギスという国には当然興味も示さなかったと思う。まだ終わってないから何とも言えないけれど、この道を選んで全く後悔はない。
キルギスのご飯おいしいし。