2012年8月16日

Mt. Damavand 二日目



16 日、7時半ころ起床。太陽が昇っていてテントの中は既に暑い。
この日は高度順応のためのトレーニング日。朝食を作り、まずはテント周辺でゆっくりと過ごす。

山から戻ってくる登山客と何人か話したが、彼らは頂上を目指していた途中高山病で頭痛がひどくなり、諦めて帰ってきたという。
私はキャンプ地にいるだけで、頭が常に痛かった。

薬を飲み、50100mほど登ってみる。少し登っただけで息が切れてしまう。これで本当に明日頂上まで行けるのかととにかく不安だった。

テントに戻ると山小屋の管理人がやって来た。
外国人は50ドルのチケットを買え、と言ってくる。一体何のためのチケットだ、と聞くも返ってくるのはペルシア語。”Understand?”とだけ英語で言われたがもちろん”NO”と答える。

テントに泊まってんだから払う必要ないじゃないか、他の人は誰も払ってないだろ、と少しきつめに言うと急に怒りだし、テントの中からバックパックや寝袋などを投げ出し始める。
ちょっと待って、まじで金ないんだ、と言うと(これは本当)テントをひっくり返し「だったらさっさと帰れ!」と怒鳴ってきた。これにはさすがにカチンときたよねー。

あまりに腹が立って今まで言ったことのないような言葉も放っていた気がする。日本語でもあんなに怒鳴ったことはないんじゃないかと思う。彼はあまり英語をしゃべれないのでたぶん言った内容はほとんど理解していないだろうが。

何を言ったか忘れたが、私が何か言った瞬間彼が頭の大きさくらいの岩を持ち上げ私の胸に突きつけてきた。
ああ、もう何でこんなに美しい山の中でこんなことにならなきゃなんないんだ。

とりあえず岩を奪いその辺に放り投げたが、まだ懲りずにムキになって怒鳴ってくる。周りに誰もいなかったのでとりあえず大声で”Essi!”と友達を呼び、事情を話した。

どうやらここダマバンド山では、確かに外国人ツアーの場合50ドル払わなければならないらしい。
でもその規定書(英語)を読むと、ツアーで来ている外国人のみがその対象とのことだった。つまり個人登山者はその対象外。
それを管理人に話すも、やっぱり引かない。

山小屋の中にいた他の登山客5,6人もやって来て、みんな管理人に向かって怒鳴り始める。これはやっぱり詐欺だ、とEssiは言っていた。

イライラして荷物まとめていると、昨日のおじいちゃんMajibさんがやって来て、管理人と何やら色々話し始める。そして「中の宿に泊まりなさい、そしたらお金は払う必要はないから」と言ってきた。テントだとお金かかるのに山小屋泊でタダになる理由が全く理解できないのだが。。とりあえずそうまとまったらしい。
Majibは何度もここに来ていて管理人とも仲がいいみたいだ。

正直帰るか、ここに留まるか迷っていた。
この腹立たしい管理人と同じ場所に居たくはなかったが、こいつのために全てを無駄にするのも何だか悔しい。それにまだ頂上を目指してもいない。目指してもいないのに帰るのはやっぱり無理!という訳でMajib について山小屋の中へ。

大部屋の中には二段ベッドが20個くらい並べられていて、知らない人とも隣り合わせになって寝る。
私は一番隅の上の段のベッドを貸してもらえた。

近くに居た女の子たちが英語で話しかけてきてくれたり、日本に8年間住んでいたというおじさんもやって来て、「日本でたくさんの人が助けてくれたから、私もあなたを助けたいです。何かあったら何でも私に言ってください」と日本語で言ってくれた。

とりあえず昼寝。2時間くらい寝た。
起きると、頭痛は治まっていて、大分体が楽になっていた。あと2時間したら日没だ、ということで午後のトレーニング開始。

身軽な格好に着替え、ゆっくり歩き始める。自分のペースが段々分かってきた。登っても登っても、今までのように苦しくはならなかった。少し斜度がきつめの道を選び、ガレ場の中両手を使いながら歩く。こういう道の方が好きだ。


ある団体の一人が笛を吹いてそれに合わせてみな歌っていた。
これはいた人にしかわからない、極楽の極みです。山に響く歌声と笛の音が、頭痛もなにもかも癒してくれる。

その団体の何人かが英語をしゃべれて、一緒に登ろうよと言ってくれた。彼らと一緒にさらに300mほど標高を上げる。

4700mくらいの地点まで来て、ストップ。色々話をしながら40分ほどそこで過ごし、下山。


日没の時間だった。夕焼けがとても綺麗だ。

宿に戻るとMajibさんがやって来て”Say ‘Kheili Mamnoon’ to Mohammed”(モハメドにどうもありがとうと言いなさい)と言ってきた。モハメドが誰のことだか分からなかったが、ついていくとあの管理人。何でこいつに・・と思ったが、妥協も大事ってことね。でないと今夜も明日もまたお金のことを言われる羽目になるだろう。
「彼、ほんとは良いやつなんだよ。ただ時々ああなっちゃうんだけどね」とMajibさんが笑って話してくれた。

トイレや談話室で会う人たちも、なぜか皆私の名前を知っていて、「日本出身のミユだよね?さっきの喧嘩見てたよ。彼、いつもは優しいんだけどたまに頑固になっちゃうんだ」とか「日本人はもっと静かだと思ってたよ笑」と言ってくる。
私には信じられないが、実はいいやつらしい。

Majibさんと夕飯を作る。私にとって炊事は山での楽しみの一つでもある。山で時間かけて作った料理やコーヒーって、なぜかめちゃくちゃおいしいんだよね。

山小屋の中はテントの中と比べ物にならないくらいあったかい。Majibさんは「内緒だよ」と言いながらウォッカを飲んでいた。
彼には頭が上がらないわ。2時間くらいしゃべって、ベッドへ。22時過ぎ頃就寝。

つづく。

0 件のコメント: